トイレの先生 😊


入院したことをきっかけに
膀胱留置カテーテル
通称 バルーン
となってガーデンに
戻ってこられた女性がいます。

膀胱に挿入されたカテーテルの先が
風船状にふくらんでおり
膀胱に尿がたまると管を
通して外袋に溜まる仕組みです。




長年、小学校の教員をしていた
というその女性を
私たちは敬意をこめて「先生」と
お呼びしています。

先生はご高齢になってからも
尿意、便意はしっかり。
ご入院になる前も
『オシッコがしたい』
『トイレに行きたい』と
日に、何度も訴える方でした。


退院時にもらう書類には
尿閉』とだけ書かれていたけれど
バルーンになった詳しい経緯は
伝わってきません。

トイレの訴えが多い
介助を要する高齢者が なんらかの
理由をつけられてバルーンと
なって退院してくる.......
まぁ、よくある話しではあります。




退院後、やはり以前のように
オシッコがしたい
トイレに行きたいと言われるんです。
バルーンになっていることを
ご説明しても
理解できるのはその場だけ。

日に何度も何度も
『オシッコが.......したい』と
声をあげる先生の姿。
スタッフはそのたびに
ご説明したり、気を紛らわしたり
して対応しているのです。


そして月に一度、
訪問診療によりカテーテル
交換する処置を受けるのですが
その時の痛みはかなりのもの。

痛みに耐える姿を見るのは
ツラいものでした。



ーーーバルーンをとったら
本当に尿は出ないのかな?ーーー

長くその女性と関わっている
主任は 日々の様子から、
バルーンを外しても
尿が出るような気がすると
感じていました。

そんな思いを
医師に相談してみると……

「尿が出るかどうか
バルーン外してみようか」と
言って下さり
もし出なかったらその日のうちに
また来て膀胱カテーテル
挿入する処置をしてくれると
約束してくれたのです。

訪問診療の日
バルーンを外しました。

しばらくすると
トイレに行きたいと訴える先生。
スタッフが急いでお連れすると
しっかりと自尿が!
トイレの中で歓声があがります。
「先生、出たねーッ (^.^)/~~~
やったーーーー (^.^)/~~~!」

その後も 時間をおいて
トイレで尿が確認されたため
バルーンは外して経過をみていく
ことになりました。

報告をうけた
向日葵クリニックの看護師さんも
一緒になって喜んでくれ
みんなで95歳のオシッコに
大喜びした一日でした。
 
主任は言いました。
ーーー
私たちが
してあげられることなんて
ホントに 限られてるんです。
トイレに行きたいって言う、
それだけの希望くらい
叶えてあげたいですよ。

ーーーー ホントにね ✨





このケースがどうだったのかは
わかりません。
でも.......
看護する側の手間を省くために
入院するとすぐ
膀胱留置カテーテルにされてしまう
高齢者が多くいるのは
まぎれもない事実です。

尿路感染症への高いリスク、
認知症による自己抜去の可能性....
なによりも
管がつながったまま
過ごさなければならない
その人の尊厳に関わる問題。

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それらを考えて本当に
膀胱留置カテーテルが必要なのか
その後も続いていく
その人の生活まで思いを
巡らせてくれる医療者が増えることを
願っています。