ふたりの再出発

その夫婦に子供はありません。

夫の一目惚れで買ってきた
シェパード犬ラッキーと夫婦ふたり
東北の地に暮らしていました。
ラッキーが天寿をまっとうした後は
新しい犬を迎えることはせず
夫婦ふたり。
無口で不器用なご主人と
底抜けに明るい奥さんが支えて合って
暮らしていました。

ある時、奥さんが病に倒れました。
長い入院生活の末、
家に戻ることは叶わず
老人施設で暮らすことになりました。
ご主人は毎日のように妻の面会に
通ったそうです。

••• コロナが日本に入り込むまでは。

面会が制限されるようになって
ご主人の生活は閉ざされた。
誰にも会わない。
誰ともしゃべらない。

奥さんはそんなご主人が心配で心配で。
麻痺のある右手でペンをもち
リハビリも兼ねて
夫に手紙を書き続けたそうです。

ご主人の心身にもやがて異変が
起こり始めた…
妻と離れ離れの生活に絶望し、
山にこもって行方知れずとなり
警察が捜索したこともあったそう。
言動がおかしい…部分もあり
支援が必要な状態だと認定されました。

連絡を受けた親族は
この夫婦を自分たちの暮らす
船橋に連れてくることに決めました。

まずは在宅で暮らしているご主人を。
次に施設で暮らしている奥さんを。
順番に千葉に連れて来たのです。

これからはガーデンの小規模多機能を
利用しながら夫婦が一緒に暮らす。
親族さんは自宅をリフォームし
夫婦ふたりが一緒に過ごせる部屋も
作ってくれました。

引越して来た時のふたりは
久しぶりの再会で照れつつも嬉しそう。
車椅子に乗る奥さんの世話を焼く
ご主人の姿が微笑ましくもありました。

奥さんが言いました⤵
「アタシは手紙を書いたけど、
この人は一度も返事をくれなかった!」

ご主人も言いました⤵
「返事は書かねぇけど、
お前からの手紙は全部ちゃんと読んだ!」

もぉ〜 (´ε` )
不器用なんだから~(//∇//)

夫婦ふたり。
新たな生活がスタートしています。